雑記

決算書作成の最終打ち合わせを税理士として、そのあと徹夜で来期の予算を考えて、「よーし仕方ない、社用車の買い替えはまだ無理だなぁ」と決めた数時間後に全損事故で涙目になった話。

いやタイトルがすべてなんだけども(激涙)

うちの会社は6月が決算月。だからその数か月前からラストスパートで数値を積み上げていく必要がある。6月30日が終わって新しい期である7月1日を迎えると、今度は決算書作成をしなければならない。

この決算書作成が面倒で、7月と8月の事務作業の時間の大半はこれに費やすことになる。税理士さんとも頻繁に連絡を取り合い、不十分な箇所を確認修正していく。

なにせ、期が終わって2か月以内に決算書を作成し終え、納税をしなければならないのである。世間的にはちょうどお盆休みの時期だ。「夏休みはどうされるんですか?」なんて聞かれると

「手つかずの夏休みの宿題がたくさん残っているのに、8月31日の朝からラジオ体操に行き、テレビであさりちゃんを観て、市民プールに出かけ、駄菓子屋に寄り、ハンバーガーを食べ、ファミコンをして、野球をして、夜はドリフで大爆笑をするとでも?」

なんて言い返したくもなる。言わないけどさ。

とにかくそんな気の張った状態が、決算書作成とその納税を終えるまで続くのである。こんなことを20年も繰り返してきた。だれか褒めてほしい。「すごいですよね」「大変ですよ」「めっちゃイケメンです」とかなんとか。最後のやつとか、ほんともう。



8月20日に税理士さんとの面会での最終打ち合わせを終えた。前期が経営者になって初めての赤字だったので、今期は絶対赤字にするわけにはいかない。かつて兵庫県中小企業家同友会のブランド愛称としてクロジノという名前を起案したことがあるくらいだ。経営をしていく上で黒字は絶対的命題なのだ。

ただ、実際は厳しい。煮卵入りラーメンを食べ、夕食用に大根やニンジンを買い、好きな車を乗り回し、ゴルフで日焼けをして、そのあとの会食の費用の領収書まで経費にできるような経営者とは一味も二味もちがう。うちの会社は極貧なのである。ゴルフ焼けの経営者と一緒にしてはだめだ。

業務で使ったガソリン代や駐車場代、買ったノートパソコン、仕入れで用いたお金、保険代、ありとあらゆるものを会計ソフトから削っていく。売り上げを増やすことは無理なので、経費を削っていくのである。こうすると、利益が増えていく。

削っていくとはつまり、経営者が自腹を切ることなんだけどね。

ようやく、ようやく、ようやくだ。
駐車場代の300円だか400円だか。もう、細かく細かく細かく削っていき、自腹の費用も100万円近くなったころ、ようやく黒字レベルにすることができた。やれやれである。仕事をして、大嫌いな決算書づくりに時間を費やし、その結果待っているのは「自腹を切って納税をする」という地獄である。報われない。このお金があれば、自分は何度、煮卵入りラーメンを食べることができただろうか。

まあいい。それはいい。そんなことは極貧中小零細企業の経営者なら、みんな受け入れていることだ。

問題はこのあとなのだよ。



税理士さんと打ち合わせを終えた夜。今度は「次の期(今期)」に向けての予算検討に入る。今期はこんな費用がいるな、これくらいの売上は達成しないといけないな。こういう方針で、こういうことに注力していこう。彼ら(メンバー)にはこういうことに気をつけてもらって、こういう仕事の提案をお客さんにしてもらい、発信をしてもらおう。余裕があれば煮卵ラーメンを買おうetc…

なにせ極貧だ。
余裕があれば今期の予算で車の買い替えも行う予定だった。ディーラーの担当者からもずっとリプレースを提案されている。ボロボロにもなってきている。でも無理だ。そんなお金はない。仕方ない。

車、延命

今期の予算計画書に書き入れる。エンジンが壊れたら、みんなで引っ張ればいい。荷物を運べたらそれでいい。延命。決定。

そんな予算検討を、朝まで徹夜で行った直後のことである。

「社長、報告があります」

電話がかかってきた。なんだろう。大口の契約でも決まったかな。

「車を運転していて、停まっていた無人の車に追突事故を起こしてしまいました。無人だったのでお相手にケガはありません。うちの車からはエアバッグが出ています。いま、警察にも事情をお話しました。保険会社に電話をしてレッカー移動してもらったらいいですか?」

え?



実際の電話はもっと支離滅裂だった。順不同に喋るもんだから、要領を得ない。レッカー移動をした方がいいですか? と聞かれて、「いやだめだ」と答えたらどうするつもりだったんだろう。猛暑日のこんな日に、車を引っ張っっていったんだろうか? HAHAHA。それはおもしろい。よし、その姿を動画で撮影して、YouTubeでバズらせよう。これは受けるぞ。そして叩かれようか、炎上するぞ。HAHAHA。

まあでも実際、笑い話ではないのだ。なにせ、お相手の車を破損してしまったわけだ。誠意ある対応をしなければならない。どんなことでもそう。トラブルを起こしたときは、まず最初にお相手のことを考える。これはうちの会社でずっと言い続けていること。自分たちの利害を優先して考えない。人間として当たり前のことだ。

でも、と思う。

ついさっき。
ほんの数時間前。

「延命」と決めたばかりの資産が、車が、「全損」になってしまった。なくなってしまった。もうボロボロの車だ。保険で直す、買い替えるというのは現実的ではない。嗚呼。ついさっき「延命」と決めたばかりなのに、数か月前から決算に向けて走ってきて、決算書作成に追われ、自腹を切りまくって、それでもしんどくて「延命」を決めたばかりなのに。嗚呼、嗚呼、嗚呼。

と、まあ。

これが今回、2025年決算書作成直後来期予算決定後社用車消滅事故のあらましである。軽く済ませる話でもないので、自戒を込めて、ここに記しておくことにした。

パトラッシュ。ねえ、パトラッシュってば。